「自分」という物語に、時間を使うということ。

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「誰かに話を聞いてほしい。でも、ただ聞いてもらうだけで『スッキリした』だけじゃ、何かが足りない気がする……」 そんな風に感じたとき、私たちはどうすればいいのでしょう。

今は情報が溢れ、AIが話を聞いてくれる時代になりました。「あれはどうしたらいい?」「これはどういうこと?」と尋ねれば、AIは即座に方法や手順を示してくれます。それは頭の整理にはとても役立ちます。

けれど、本当に心がモヤっとしていること――例えば、転職や引っ越し、学校や病院への相談、家族や友人にどう伝えるべきかといった、人生の岐路。  こうした内側の深い問題をAIに相談しても、最終的に行動するのは自分自身です。

どれほど立派な解決策を教えてもらっても、自分自身が実行しなければ、現実は一歩も動きません。充実した対話ができた「気がして」も、実際に前へ進めるのは、自分だけなのです。

実は、LDCの開業にあたってAIに何度も助けられました。もはやなくてはならない、心強いツールです。 人と人とのやり取りには、意思疎通の難しさや責任が伴いますが、AIなら文句を言っても関係が壊れることはありません。だから「AIで十分だ」と思う方も多いはずです。 ですが、不思議なことに、AIに相談すればするほど、「人間である誰か」に話したくなる瞬間がいつも訪れます。

それに、実際に銀行へ足を運び、役所の手続きをし、何から何まで行動するのは私自身。当たり前のことですが、AIが私の代わりに現実を動かしてくれることはありません。

ではそもそも、カウンセリング・コーチングとAIに相談することは何が違うのでしょうか。 「ただ話を聞いてもらうだけのことに、AI 以上に時間やお金をかける価値はあるのか?」と思われる方がおられるのは理解しています。

癒しや励ましが必要なときは、家族や友人が力になってくれます。私にも、 じっくり話を聞いてくれる大切な人たちがいて、本当にありがたい存在です。 けれど、身近な人に頼り続けるだけでは解決が難しいこともあります。   つい周囲に話すことで、かえって心配をかけてしまうこともあるでしょう。 「この心の重さを、誰が引き受けてくれるだろう」「こんな重い話をしても大丈夫だろうか」そう躊躇して、一度手に取ったスマホを置いてしまうこともあるかもしれません。 「何をどう伝えたらいいか分からない」「そもそも、自分は何が苦しいのか言葉にできない」

そんなとき、専門家に相談してみることで、「ああ、この人はわかってくれる」という実感が得られます。 専門家に相談することは、ただ話を聞いてもらうということではありません。止まっていた問題がようやく動き出す瞬間を作り出すように、自分自身を救い上げてくれる時間を得ることです。     人は自分の重い悩みを受け止めてくれる「誰か」を、心のどこかで探し求めているから、AIではない「人の力」に引き寄せられるのだと思います。

なぜ、そう実感できるのか。それは、自分でも言葉にならなかった想いを、 専門家がそっと言語化してくれるからです。 バラバラな点ばかりが溢れて混乱していた状態から、「そうか、そういうことだったのか」と、点と点が線になる瞬間。 たとえネガティブな出来事であっても、その意味が自分の中で腑に落ちたとき、心に引っかかっていた重荷がふっと軽くなります。人はそこで初めて、ほっとして顔を上げることができるのです。

「話してよかった」と感じられる時間には、確かな意味があります。

けれど、実は――。その先に、もう一段深い「問い」が待っています。

そのお話は、次号で。